ふくろうアシストがこれまでに関わった支援の事例を紹介します。いずれも視覚障害当事者が直面した具体的な課題に向き合い、ITやAIの力で解決した実践例です。
事例1:全盲ヘルスキーパーの転職成功支援
課題
全盲のヘルスキーパーとして働いていたAさんは、転職を希望していましたが、ビジネス文書の作成スキルに自信が持てない状況でした。スクリーンリーダーでWordやExcelを操作することはできても、晴眼者が見やすいレイアウトに整えることや、実務で使えるレベルの表計算スキルを習得することが課題でした。
支援内容
Wordでは、点字と墨字のレイアウトの違いを丁寧に説明しながら、体裁を整えたビジネス文書の作成方法を習得していただきました。Excelでは、関数・並び替え・オートフィルタ・ピボットテーブル・グラフ作成まで、実務で必要なスキルを段階的にお伝えしました。
成果
習得したスキルをもとに、就労移行支援事業所(東京視覚障害者生活支援センター)を経由して転職に成功しました。ITスキルの習得が、新たなキャリアへの扉を開きました。
※本事例はJEED発刊「働く広場」エッセイコーナーに掲載されています。
事例2:全盲音楽教師の授業資料作成環境構築
課題
全盲の音楽教師として働くBさんは、授業で使うWordやPowerPointの資料を自分で作成する必要がありました。しかしスクリーンリーダー環境では、書式設定やレイアウト調整の作業に多大な時間と労力がかかり、本来の授業準備に集中できない状況でした。
支援内容
テキストベースの軽量マークアップ言語であるMarkdownを習得していただき、pandocというツールを使ってWordやPowerPoint形式に自動変換する環境を構築しました。これにより、レイアウト調整の作業をツールに任せ、内容の作成に専念できるワークフローを実現しました。
成果
WordやPowerPointで直接書式設定・レイアウト調整する作業から解放され、授業資料の作成に集中できる環境が整いました。視覚障害者が「見た目」の問題を回避しながら資料を作成できることを実証した事例です。
※本事例はJEED発刊「働く広場」エッセイコーナーに掲載されています。
事例3:全盲夫婦のケアマネージャー資格取得支援
課題
整形外科クリニックに勤務する全盲のCさん・Dさん夫婦は、在職中にケアマネージャー資格の取得に挑戦することになりました。しかし受験申込書は紙のみの提供で、点字版もデータ版もない状況でした。県との交渉の末、表計算ソフトのデータを入手することができましたが、複雑な表形式のファイルは画面読み上げソフトでは内容が把握できず、自分たちで書類を完成させることが困難な状況でした。
支援内容
AI(Gemini 2.5 Pro)を活用して、視覚的な表形式のデータを、音声で理解しやすい質問形式のテキストに変換しました。「該当する項目に〇を付ける」という視覚を前提とした指示を「次の選択肢から選んでください」という形式に置き換えることで、スクリーンリーダー環境でも内容を理解しながら書類を作成できる状態を実現しました。
成果
二人は自分たちの手で申込書を完成させ、無事に受理されました。デジタルデータとAIを組み合わせることで、視覚障害者が自力で行政書類を作成できることを示した事例です。
※本事例はJEED発刊「働く広場」エッセイコーナーに掲載されています。
事例4:AI活用による教材制作(自己実践)
課題
東京都立高校での福祉体験授業(2026年3月)を担当するにあたり、視覚障害理解講話用のPowerPointと事後学習用プリントのWordデータを作成する必要がありました。スクリーンリーダー環境では視覚的なレイアウト作業を伴う教材制作が困難であることが課題でした。
支援内容
Claude Sonnet 4.6に対して明示的な指示出しを行い、PowerPointおよびWordの教材データを作成しました。スクリーンリーダー環境下でAIへの指示出しを工夫することで、視覚的なレイアウト作業を伴う教材制作を自力で完結させました。
成果
授業で実際に活用できる教材を単独で完成させました。視覚障害当事者がAIを活用して教材制作を完結した実践例として、AI活用支援サービスの基盤となる実績です。
事例5:援助職向け引き継ぎ連絡票の開発(自己実践)
課題
複数の訪問介護事業所・ガイドヘルパー・訪問看護・訪問診療・訪問リハビリなど、多数の援助職が日常的に出入りする環境において、援助者間の申し送りが十分にできないという課題がありました。複数事業所から異なる援助者が派遣される複雑なスケジュールのなかで、申し送り簿の作成・運用が実現できていませんでした。
支援内容
Claude Sonnet 4.6と協働し、援助職間の情報共有を円滑にする「援助職向け引き継ぎ連絡票」アプリを開発しました。視覚障害当事者がAIへの明示的な指示出しを行いながら、実際の生活環境に即したアプリを設計・実装しました。
成果
開発したアプリをGitHubで公開しました。視覚障害当事者がAIと協働してアプリ開発を完結した実践例であり、AIが視覚障害者の日常生活上の課題解決にも活用できることを示しています。
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